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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)211号 判決 1972年4月20日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人吉田正一の上告理由第一および第二について。

不動産の賃借人が賃貸人から当該不動産を譲り受けながらいまだその旨の所有権移転登記を経由していない間に、さらに第三者が右不動産を譲り受けてその旨の所有権移転登記を経由したため、前の譲受人である賃借人において右不動産の所有権取得を後の譲受人である第三者に対抗することができなくなつた場合には、一たん混同によつて消滅した右賃借人の賃借権は、第三者が所有権を取得すると同時に、同人に対する関係では消滅しなかつたことになるものと解するのが相当である(当裁判所昭和三七年(オ)第九〇四号同四〇年一二月二一日第三小法廷判決・民集一九巻九号二二二一頁参照。)。したがつて、以上と同旨に出たものと解される原審の判断は正当であつて、原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に立つて原判決を非難するか、または、原判決を正解しないでその違法をいうものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岸 盛一 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三)

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